理事長コラム

Director's COLUMN

あの春、恩師がくれた言葉——学び合うチームの原点

こんにちは。  

神奈川県湘南エリアに4医院を展開するゆめの森歯科の理事長、宮前です。

春になると、ふとある恩師の言葉を思い出します。  

それは、私が総合病院で勤務していた頃、研修医を終えたばかりの1年目の春のことでした。

初めての出会い

ちょうどその時期、新たに赴任してきたのが、大学で教授を務め、多くの著書も出されているような、本当に「大先生」と呼ばれるような存在の先生でした。  

セミナーや講演にも多数登壇されていて、研修上がりの1〜2年目の私たちからすれば、雲の上のような方です。

そんな先生が、初めての朝礼で皆の前に立ち、最初に口にされた言葉が今でも忘れられません。

歯科は難しい。まだまだ学ぶことがたくさんあります。
一緒に学ばせてください。

えっ…この先生が?  その一言に、私は驚きました。  

だって、その先生こそ、私たちが教わる側なのに。  

「学ばせてください」と頭を下げる姿に、言葉以上の大きなものを感じたのです。

教えることで、学ぶ——現場で見た学びの連鎖

しかも、それは口先だけの挨拶ではありませんでした。  

実際に診療の現場でも、私たちのような1〜2年目の若手に対しても、「これ、教えてくれる?」と頭を下げて聞いてくださったのです。  当時の私にとっては、信じられない光景でした。  

「あの先生が、僕らに聞くの?」と緊張しつつも、光栄で、身が引き締まる思いでした。

そして、振り返ってみて、一番印象に残っているのは、その先生が自然とつくり出していた学びの連鎖です。

もちろん、ご自身も若手やスタッフから新しい視点を吸収しようというお気持ちがあったと思います。  でもそれだけでなく、あえて質問することで、  教える側に「もう一度きちんと学ぼう」と思わせる機会を与えていたのだと思うのです。

人に教えるという行為は、自分自身の理解を深め、じつは一番の学びになります。   誰かに聞かれると、「しっかり伝えなきゃ」と思い、自分の知識を見直し、復習し、  ときには調べ直して、わかりやすく言葉にしようとする。

それがまさに、教育であり、成長のチャンス。

ベテランの先生が若手に教えを請うことで、  若手は自分の中にある知識を言語化し、深め、整理して伝えるようになる。  こうしたやりとりが積み重なっていくと、組織やチーム全体に「学び合う文化」が自然と根づいていくんですよね。

私はあの頃、現場の空気のなかで、学びって一方通行じゃないんだな、と心から感じました。

「学ぶ姿勢が連鎖する」それが、チーム作りの土壌に

私はこの経験から、「学ぶ姿勢が連鎖する環境」こそが、良いチームを作る土壌になると強く実感しました。

知識を深めるだけでなく、互いに教え合い、刺激し合うことで、チーム全体が前向きに成長していく。  

それは、決して一人ではできないことです。  

学びを共有するからこそ生まれる、プラスの循環があるんです。

春は出会いと学びの季節——だから、私たちは学び続ける

ある程度キャリアを重ねると、つい「若手から学ぶことなんて…」と思いがちですが、むしろベテランだからこそ、学び続ける姿勢が必要だと痛感しています。  

医療に“ゴール”はありません。日々アップデートされる知識や技術に、謙虚に向き合うこと。 

そして、自分が学び続けることで、周りも学び始める。その連鎖が、チームの成長にもつながるのです。

春は出会いの季節。  

新しい仲間、新しい患者さん、そして新しい知識との出会いもある季節です。  

そうした出会いを大切にしながら、私自身も、そして私たちのチームも、「学び続けることを楽しむ」ことを忘れずにいたいと考えています。